セザール・マルティネィ

 

   ガウディには、10人の使徒がいた。その中でよく知られているのが、ジョセップ・マリア・ジュジョールとジョアン・ルビオであり、セザール・マルティネィの名はあまり知られていない。実はかく言う私も、ついこの間までは「カタラン・ボールトをうまく使いこなす、ガウディ風建築を作る建築家」という程度の認識しかなかったのである。

 我が家のすぐ近くに、柱、壁、屋根すべてむき出しのレンガ積みで、薄いレンガ屋根が何重にもうねっている不思議な建物がある。モデルニズモ(スペイン・アールヌーボー)建築のコーポラティブ(協同組合式ワイン醸造所)で、その前の通りは「セザール・マルティネィ アルキテクト(建築家)通り」と名付けられている。最近きれいに修復され、薄いレンガを使ったカタラン・ボールト屋根の有機的な曲線が見事に蘇った。そしてそれは、もしかするとガウディの建築の曲線を超えてしまうレベルにまで行っているのではないか、と思わせる美しさと力強さがある。それもその筈で、マルティネィはカタラン・ボールトの技術顧問として、サグラダ・ファミリアでガウディとコラボレーションしていたのである。ガウディの曲線を技術的な面でサポートしていた使徒、だったのである。

    彼はガウディと同郷のタラゴナの内陸、ヴァリャス出身である。ローマ時代、イベリア半島における最も大きなローマの植民地タラコのあった所で、昔からオリーブとブドウの産地として有名なこの地方は、カルソッツと言う郷土料理でも知られる。(料理のページを参照されたし)そしてこの辺りには、100年近く経つコーポラティボが地区毎に建っており、これらはワインのカテドラルとも称されている。

 収穫したブドウをコーポラティボに持ち込み、そこでワインやカバ(発泡性ワイン)に醸造し、樽詰めや瓶詰めにして寝かす。そのワインのカテドラルをこの地方に40も建てたのが、このセザール・マルティネィと言う建築家なのである。1888年に生まれ1973年まで85歳の、当時としては長い生涯を送っている。

 彼はガウディ同様、中世の建築史をよく研究し、カタルーニャ・ゴシック民家建築様式の研究、近代的発展に貢献した。そしてこれが、バルセロナのモデルニズモの発展へと繋がったのである。と言うのも、ガウディの逆さ釣り実験で有名なカテナリー曲線を、カタラン・ボールトを使うことにより建築構造的に発展させ、その結果、真っ直ぐに立っていた柱は、カテナリー曲線状にすべて斜めに傾いており、有機的な曲線の空間を生み出すことに成功したのである。その中でも、彼の代表作であるピネル・デ・ブライの酒蔵が、一つの頂点を極めた。(興味のある方はwww.martinell.org を参照して下さい)

 

    次回は、彼の作品「サン・クガットのコーポラティブ」の建築的分析を通して、実際に彼独自の合理的で有機的な建築空間を解明する。

 

 

 
 

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